CEO Bunasawa Kazuki

「人生を余すことなく楽しめる人を増やし、wellnessが当たり前の世界を創る。」

創業以来、”ウェルネスが当たり前の世界の実現”を目指してきたジェイエルネス。未経験から即戦力のトレーナーを育成し、就職・独立など総合的なキャリア支援を行うトレーナースクール2ndPASS(セカンドパス)は、直接提携ジム1,500店舗・全国15校舎・累計1,800名以上のトレーナーを輩出する日本最大級のサービスへと成長。そんなフィットネス業界のプラットフォーマーであるジェイエルネスですが、樗澤は「わたしたちが解決すべき課題があります。社会構造の大きな変化が、今まさに起きているんです。」と話します。独居シニアの社会孤立を解消する、バーチャルクラブ事業「ココカラさん」について、今後起こるであろう社会課題と社会変革に取り組む意義について代表取締役CEOである樗澤に話を聞きました。

高齢者の暮らしにイノベーションを。「祖母がテレビの前に座り続けている姿が忘れられない」高齢者がより豊かな生活を送るため”暮らし”を変えていく

まず、ココカラさんというサービスはどういったものでしょうか。

樗澤:ココカラさんは、世界で最もシニアが利用する体験共有型SNSを目指しています。

まず、ココカラさんのアプリを開くと様々な体験型コンテンツが並んでいます。フィットネスプログラムやライブイベントや英会話など様々なコンテンツをご用意しています。自分の興味のあるプログラムを選択し入室すると、プログラムに参加している人たちの中から、AIによってマッチングされた最大5名の部屋が生成されます。入室後、初めましての5名でも一緒に楽しむことができる様々な機能をご用意しています。まずは我々の強みでもあるフィットネスプログラムから提供していきますが、その後はシニアのお困りごと全てをカバーしていく予定です。最終的には「ショッピング」「リモートワーク」「オンライン診療」等を手がける事業者の方々とAPI連携を進め、シニアの方々が本当の意味で社会参加できる世界を目指しています。

2020年から構想を開始した『ココカラさん』ですが、どのように始まったのでしょうか?

樗澤:はい、振り返るとピボットの連続でした。創業事業の2ndPASSは「一家に一人トレーナーを。」と掲げて始まり、5年後には国内最大のトレーナースクールへ成長しました。スクールが全国的に拡大していく中で、トレーナーの職域を拡大するべきだという想いから、新規事業として健康経営のサービスを開発していました。「全てのオフィスに社用ジムを」と掲げたこの事業は、2ndPASSの卒業生や提携ジムと一般の企業をマッチングするサービスで、従業員数60名程度のベンチャー企業や上場IT企業にテスト導入して頂いていました。しかし、サービスリリースが差し掛かった頃にコロナが直撃し、撤退する結果となりました。そんな時、もう一度自分自身に問いかけ続けました。「ジェイエルネスが本当にやりたいことってなんだっけ?」と。その時に、スクール事業を始めたきっかけでもある「祖母の存在」を思い出したんです。そこから、構想を練り直して今のココカラさんの形に至っています。

祖母の存在とは?

樗澤:私の祖母は、運動機能が低下した結果、自宅に引きこもりがちになりました。当時の口癖は「こんなボケ老人、早く死にたいわ」で、実の娘の前(私の母)でそんなことを言うものだから、個人的にはかなりショッキングな出来事でした。今は介護施設に入っており、私のことはほとんど認識できていません。

運動機能が低下してしまった要因はなんだったのでしょうか?

樗澤:僕がちょうど社会人になった頃、祖母が道路で転倒してしまい怪我をしました。それだけが原因ではないとは思いますが、身体が回復してきても気持ちが追いつかず、食生活が偏り運動機会も少なくなり急激に認知症が進んでいってしまいました。元気な姿を見たい一心で、近所のお弁当屋さんにお弁当配達と見守りをお願いしたり、スマホをプレゼントして連絡をとってみたり、思いつく限りのサポートを家族で行っていました。しかし、そもそもスマホの使い方が分からなかったり、中々連絡が思うように取れなかったんです。

その後、お家を訪問されたんですよね。その時の姿が忘れられないとお聞きしました。

樗澤:はい、祖母は、テレビの前でずっとぼーっとしていました。元気だった頃は想像がつかないほど、寂しそうな背中だったのを強烈に覚えています。当時、祖母の住んでいた地域はコミュニティがそこまで活発的ではなく、出かけても中々話し相手もいない。ふと、自分の住んでいる地域には祖母と気が合いそうな同年代の女性がいたことを思い出して、その人と繋げることができたら…と思いました。そんな出来事もあり、私は決意したんです。「高齢者がさまざまな制約から解放され、最後まで人生を楽しめる仕組みを創る」と。

「高齢者に本当に受け入れられる?」高齢者と向き合い続ける日々。

そんな決意を経て、ココカラさんを構想したのですね。そこからは、描いたコンセプトの検証を行うためにデバイスの開発や、高齢者のご自宅で検証を重ねたそうですね。

樗澤:はい。高齢者は1日平均して5時間以上をテレビの前で過ごしています。これは私たちの世代がスマホを1日平均4時間触っている時間よりも格段にテレビの前で過ごしているんです。そこで、テレビを入力機にすることに決め、まずはデバイスの開発に着手していきました。試作機が出来上がった段階で、一般のご家庭に検証しにいきました。そこでは、1人のコンテンツ配信者と1名の高齢者、つまり1対1形式で、テレビを通してフィットネスエクササイズをおこなっていただきました。その時までは、介護予防としてのポテンシャルを強く感じていたからです。しかし、あるユーザーさんから貰った一言でプロダクトの方向性を大きく見直しました。

「これ、本当に良いわね!近所の〇〇さんと〇〇さんに教えてあげたいわ!これなら、あの人たちも続くと思うのよね。まずは連れてきて一緒に受けていいかしら?」(自宅で教室を営む74歳の女性)

と言われたんです。この女性は過去にホットヨガや体操教室など様々なオフライン店舗を利用されていて、その度に中心人物だったと聞きます。しかし、どれも辞めてしまっていました。詳しい理由は伏せておきますが、これなら続けられるとおっしゃっていたんです。この実証を機に、大きく方針転換をしました。それまでは、高齢者向けのオンライン介護予防というコンセプトでした。重要だと考えていたのは、配信コンテンツのクオリティと配信者とユーザーのインタラクティブ性でした。しかし、その一言をきっかけに、プロダクトの持つ価値や可能性を考え直すこととなります。導き出した仮説を元に、更なるヒアリングやテストを通じて確信に変わったんです。

高齢化社会にイノベーションを起こす。鍵は「テクノロジー×コミュニティ」

価値や可能性を考え直した、ということですが、具体的にはどのように変わったのでしょうか?

樗澤:はい、結論「超高齢化社会におけるイノベーション」をゴールに置きました。なぜなら、高齢者は様々な日常の制約からの解放や、体験を通じた出会いを求めていると、はっきりわかったからです。また、先程の女性の一言をきっかけに、何よりも「コミュニティの形成」が重要だと考え、ココカラさんの価値としました。

ココカラさんの価値である、コミュニティ形成はどのように行うのでしょうか?

樗澤:シニアに特化したゲーム性の高いコンテンツ、テクノロジーによるコミュニティマッチング、高齢者ファーストのUI、この3つを持ってバーチャル空間上でのコミュニティ形成を実現します。

その3つを持ってコミュニティを形成する、一つ一つ詳しく教えてください。

樗澤:多種多様な体験型コンテンツを用意しています。まずは自社の強みを活かせるフィットネスコンテンツを始めとした、高齢者のニーズを満たすコンテンツを展開していきます。コンテンツ内容が充実していることはもちろんのこと、参加者同士で一緒に楽しめる機能を実装しています。そして、二つ目は、趣味や気の合う友達が見つかるコミュニティマッチング機能です。利用頻度や利用態度をもとに最適なコミュニティをマッチングします。ココカラさんを3回使えば、気の合う友達が見つかる状態を実現します。従来の配信コンテンツマッチングではなく、一緒にコンテンツを受けるクラスメイトをAIによってマッチングしコミュニティ形成を加速させます。三つ目は、高齢者ファーストのUI。高齢者のだれもが使いやすい高齢者ファーストのUIを大切にしています。高齢者の使い勝手を第一に優先し、ストレスの掛からないUIを何より重要視し開発を行っています。

ゴールを「超高齢化社会のイノベーションを起こす」。また、この状況を追い風だと考えているとお聞きしました。どんな状況なのか教えてください。

樗澤:はい。追い風である要因は大きく3つあります。まず一つ目は、「高齢者にもテクノロジーが普及してきていること」二つ目は、「健康寿命が伸びていること」三つ目は、「高齢者の持つ市場規模の大きさ」です。

1つ目から詳しく教えてください。

樗澤:今では高齢者にとって、スマホは普通のアイテムになっているんです。60代のスマホ所有率は91%、70代も70%とかなり高く年々上昇傾向にあります。また、65歳以上の高齢者の31%がネットショッピングを利用しています。つまり、シニアの方々がもともと居住地域やデジタルデバイドによって満たすことができなかった欲求を、テクノロジーの力を駆使して叶えられる時代に突入したということです。

なるほど、高齢者にとってスマホやネットショッピングは身近なものになっているんですね。2つ目の「健康寿命」について教えてください。

樗澤:はい、今の高齢者の方々は、一言で言うと「アクティブシニア」。とっても元気なんですよね。私たちが今までイメージしていたような高齢者像とは本当に変わってきていますね。自立して、健康的に暮らせる期間のことを「健康寿命」と呼びますが、令和元年には男性で72.68年、女性で75.38年だったそうです。過去10年と比べても男女ともに伸びており、今後も健康寿命は伸びていくそうです。60代以上になっても、何かに挑戦したり、新しいことを学んだり、仕事を探したり、皆さん自立してアクティブに暮らしたいと考えています。しかし、高齢者は満たされない欲求があるんです。

自立しているのに満たされない…高齢者の満たされない欲求とはなんでしょうか?

樗澤:満たされない要因は2つです。経済的な理由によって利用できるサービス数を制限されていること、さらに身体的な理由で地域に縛られていることです。例えば、毎日を充実して過ごせるアクティブシニアが「月額7000円のフィットネスクラブ」に通っているとします。他に月額5000円の英会話に興味が出たとしても、金銭的な理由でそこまでお金をかけれないのです。さらに、月額7000円のフィットネスクラブに通ったとしても、地域や通う時間帯によって、その体験価値は縛られてしまいます。そのような制約がある限り、アクティブシニアの方々が人生を楽しみ尽くすことは難しいと考えています。我々の使命でもある、「人生を余すことなく楽しめる人を増やし、wellnessが当たり前な世界を創る」を実現するためにも、このような問題はすべて解決していきたいのです。

そのような視点で見るとアクティブシニアの方々が人生を楽しみ尽くすには、新たな仕組み、受け皿が必要不可欠ということですね。

最後に、3つ目の「高齢者の持つ市場規模の大きさ」について教えてください。

樗澤:周知の通り、日本は世界に先駆けた超高齢化国家です。例えば、国内だけを見ても運動・介護予防・習い事だけで2480億円、見守りや買い物支援・就業支援などで1.2兆円、世界の高齢者介護及び生活サービスで80兆円です。近年では、Z世代が消費の中心になっていくと言われたりしますが、私たちは高齢者にどのようにしてお金を使って貰えるかが今後の日本経済においても重要な観点になると考えています。また、日本では高齢化以上に独居世帯が著しく増加しています。2040年には約900万世帯が独居シニアになると予測されています。

日本だけではなく世界に目を向けるとどうなんでしょうか?

樗澤:はい、世界でも高齢化の波が来ていますし、元々個人主義の強い欧米では独居シニアの割合は日本よりも高く、増加傾向にあります。アジアでは、中国やタイなども高齢化が進んでいます。日本と同じように都市部に人口が集中し、地方都市は過疎化。高齢者が取り残されているのです。

フィットネスコンテンツの提供、沖縄県うるま市でのココカラさん実証実験について。

シニア×フィットネスの事例について聞かせてください。

樗澤:はい、高齢者の方々からのかなりポジティブな反応を確認することができました。内容としては、ライブ配信形式のグループフィットネスの獲得単価やLTV、そして顧客ニーズの発掘です。詳しくは割愛しますが、1年間のプログラムを終えての継続意思は90%以上と、非常に高い解像度で顧客を捉えることができています。

さらに今年は、沖縄県うるま市との実証に向けたリリースを発表しましたね。その時の様子を教えていただけますか。

樗澤:そうですね。最も印象的だったことはプレゼン最終日にかけていただいた言葉です。プレゼンを終えた時に「こんなに良いものを作ってくれてありがとうございます」と地域の福祉従事者やユーザーの方々から盛大な拍手をいただきました。まだサービスをリリースできているわけではないですが、本当に顧客にぶっ刺さっているなと確信できた瞬間でしたね。市の職員の方々や地域の高齢者の方々と議論を交わし、サービスに反映させていきました。行政側から「こういう使い方をしたい」であったり、リアルな悩みを持った高齢者と普段接している職員方から意見を貰える貴重な機会でした。

体験したら元の日常には戻れない「ココカラさん」を日常の当たり前に、そんなユーザー体験を目指して。

ココカラさんでは、デバイスやアプリなどテクノロジーを駆使しますよね。テクノロジーについてどのようにお考えですか。

樗澤:テクノロジーは、人の幸せが生まれる瞬間を生み出したり、幸せを維持したり拡張したりするものだと思います。ユーザーが一度体験したら、後戻りができなくなるようなサービスを「テックの力」で届けたいと考えているんです。これまで行ってきたユーザーテストも、目の前でユーザーの方々が感動したり喜んでいる姿を見れることが何よりのやりがいでしたし、そのフィードバックをUIに反映してはまたテストしての繰り返しです。テクノロジーの大部分を担うCTOが、同じ思想を持っていてくれているのが本当に心強いです。

今回の開発で難しかった点はどこでしょうか。

樗澤:どこが難しいというより、全てが初めてのことなので面白いですね。何より、高齢者の求めるUI/UXの正解がないのです。参考事例がないので、ゼロからコミュニケーションを設計しています。高齢者にとって、どんな画面が操作しやすく見やすいのか、常に考えていますね。例えば、私たちにはパッと見て分かるようなリアクションのアイコンが分からなかったり、画面を見ながらマイクのオンオフの切り替えが苦手だったり、画面をフルに使うUIに慣れていないので余白を重視したり。実際に高齢者がつまずくポイントを取り除いてあげることが大事だなと実感しています。

現在はテレビを入力機としていますが、今後異なるデバイスに変わる可能性もあるのでしょうか。

樗澤:テレビが正解なのか、まだ定義していません。検証していった結果、タブレットになるかもしれないし、スマホになるかもしれません。どのデバイスが最適なのかは定義していませんが、何よりバーチャル空間におけるコミュニティ作りが鍵なので、その仕組み作りを優先して構築していきたいです。また、テックリードではなく、バーチャル上のコミュニティ創出に勝ち筋を見出したからこそ、どこまでもユーザーの声と向き合っていきます。

2040年。世界で最も高齢者が使う”体験共有型SNS”を実現したい。

『ココカラさん』で実現したい目標について聞かせて下さい。

樗澤:2040年、日本の独居シニア900万人のみならず、海外でも特に高齢化していて同じ課題を抱える国に届けていきます。また、今のところ、日本の企業でSNSという文脈で戦えているところはないですよね。ですが、高齢者×SNSでは、日本発企業にもチャンスがあると考えています。世界中の70代が最も使うコミュニティサービスを目指していきたいし、実現したいです。

アクセルを強く踏んで加速できる。盤石で強い組織体制を作ってきたワケ。

ココカラさんは、「ジェイエルネスだからこそ挑戦できる」とお聞きしましたが、どういうことでしょうか?

樗澤:まず一つ目の理由は「盤石で強い組織作り」二つ目は「創業事業とのシナジー」三つ目は「ジェイエルネスの使命と強く関係している」ことです。

「盤石で強い組織作り」ですが、ココカラさんの構想が始まってから二年間収益を出さずにできているのは創業事業である2ndPASSが安定して収益を出し続けているからです。シニア×SNS領域は、未だ成功事例がないという点では大手が参入する領域ではないものの、足が長くなる可能性が非常に高く、立ち上げ期のキャッシュ問題がつきまといます。2ndPASSは、私が現場に入るのをやめてから2年経過していますが今でも成長を続けてくれており、この利益なしでは開発すらできなかったと思います。そのためにも、組織改革を進め、社員全員が強い推進力を持って仕事に取り組める体制をCHROと共に整えてきました。

二つ目の「創業事業とシナジー」についてです。ココカラさんは、フィットネスコンテンツを足掛かりに様々なコンテンツを展開する予定です。日本で最もフィットネス人材を育成する2ndPASSを運営してきたわたしたちならではの、勝ち筋があると信じています。

三つ目は、「私たちジェイエルネスの使命と強く関係している」点です。私たちは、「人生を余すことなく楽しめる人を増やし、wellnessが当たり前の世界を創る。」という使命を掲げています。ココカラさんは、立ち上げまで2年以上の時間を要しました。きっと、今後も10年20年30年かけて育てていくサービスだと考えています。本当にイノベーションをおこせるかどうかは、メンバー全員が一生向き合い続けたいと本当に思っているかにかかっていると考えており、私たちにはその覚悟があるということです。

最後にどんな人にジェイエルネスにきて欲しいか教えてください。

樗澤:まずは、プロダクトや目指す世界に心から共感してくれることが第一です。これは必要不可欠だと思ってます。そして、顧客に興味を持てる人。顧客がリアクションしたデータなのか、はたまた言葉なのか。何をシグナルとして受け取るのかは、その人の性質や得意な領域によると思います。いずれにせよ、顧客に興味を持てる人に来ていただきたいです。話は少し変わりますが、よく「会社は学校じゃない」みたいに言われることがありますよね。個人的には同感です。学校は学ぶための場所であり、自己成長すること自体が目的です。しかし、会社は社会のために存在しているわけですから、価値を届けることが目的で、自己成長は手段です。つまり、顧客に少しでも喜びを届けるために自己成長を惜しまず、ハードな状況も楽しめる人と一緒に使命を全うしたいと考えています。


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